ルール改定がもたらす開発におけるイノベーション

OECD開発協力局 局長 ジョン・ロモイ

一般に統計の話をする際、技術革新(イノベーション)という言葉はあまり頭に浮かばないかもしれません。しかし、OECDでは今まさにそれについて新たな取り組みを始めようとしています。具体的には、途上国向けの開発資金の量的拡大、またその資金の有効(効率的な)利用を促すため、開発資金のモニタリングおよび集計手法のイノベーションを検討しています。

これまで半世紀以上にわたり、OECDでは独自の政府開発援助(ODA)定義に則って、途上国および多国間機関へのODA資金の流れの統計報告・集計を行ってきました。また、集計されたODAの量(額)は、各援助供与国の開発への取り組み努力を数値的に評価する指標としても使われてきました。

つまり、どのような開発援助プログラムが実施され、どれくらいの規模の資金が動員されるのか等は、ODA統計報告・集計ルールに大きく影響されるのです。言い換えるならば、ルールの形によっては、ベストな結果が最大限得られることに重点を置くのではなく、援助供与国をよりよく見せることを目的とし、ODA資金の増加のみを目標にした開発事業を優先してしまうといった誘惑が存在することも事実なのです。一部の開発金融機関では、民間投資家(企業)による開発関連事業への支援が、ODAとしてカウントされないという理由だけで、断られるケースがあったことも聞いています。

それゆえ、開発資金の統計報告・集計手法を改革することによって、開発におけるイノベーションに拍車をかけたいと考えています。いかなる分野の会計システムにも共通することですが、明確かつ強固なルールは不可欠です。しかし一方で、そうしたルールがあまりに制限を課すことになれば、開発資金が減り、開発努力がむしろ報われないといった結果をもたらしかねず、本末転倒となります。

特に、民間資金の流入が期待できず、ODAに依存しなければ開発資金が不足してしまうような国々にとっては大変な問題となります。こうした国々は大抵、顕著な貧困に苦しむ後発発展途上国であり、多くの場合紛争下に置かれ、重要な開発課題に直面しています。開発資金がこれらの国々へ流れることを促すことにより、単に資金の穴埋め的役割ではなく、民間資金を呼び込むための触媒的役割も担えます。今後もODAの果たす役割は重要であり続けますが、発展途上国の持続可能な成長のために、インフラ整備などにおける民間投資の増加を通じた経済成長をこれらの国々は必要としています。ODAを活用して、途上国との取引に関わるリスクに対しての信用および保証を提供し、リスクを軽減することにより、民間企業や政府系投資ファンドが運用する数兆ドル規模にのぼる資産を対途上国投資のため引き出すことが可能になるかもしれません。

OECDに加盟するドナー諸国は、年間総額およそ1300億ドルもの開発援助を供与しています。しかし、世界各地のあらゆる開発課題は膨大なスケールに及ぶため、今後数十年間にわたって数兆ドル規模の資金が必要となると言われています。現在国連の主導のもと、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限を迎える2015年以降の持続可能な開発に関する目標設定へ向けた国際的な努力が続けられています。このポスト2015年開発アジェンダでは、極度の貧困撲滅だけでなく、現行のMDGsでは対応できていない、より広範な環境・経済・社会における持続可能な開発への課題に対応できるよう、包括的な目標になるでしょう。

この野心的なアジェンダの成功を実現するためにも、開発のための資金調達におけるイノベーションが重要となります。新しいルールはその新しい革新的なツールを記載するだけでなく、その活用を積極的に奨励する必要があります。そのためには、開発政策の策定および実施を担う政府機関内の意識改革と実践も伴わなくてはなりません。

最後に、外国からの途上国向け資金の流入は大きな差を生むと思われますが、最終的にはこの資金を活かす被援助国自らの努力であり、当面は税制、貿易を通じた独自の資金調達と併せて、それらが真なる持続可能な開発を導き出すことになるのです。このような国々の努力を支援するためにも、そしてすべての人が開発による恩恵を受けられるよう、ODAを“スマート(賢く)”に使うことが期待されています。

「開発のためのファイナンス」に関わるOECDの活動詳細については、OECDホームページをご参照ください。また、今年10月に出版するOECD開発協力報告書(Development Co-operation Report 2014)でも、開発のための資金調達の効率化ついて特集を組む予定です。最後に、各国における開発の格差解消に貢献する革新的な取り組みを奨励・促進するため、OECDでは新たに「DAC賞」を立ち上げました。

William Saito
Special Advisor at Cabinet Office (Govt. of Japan)
Named by Nikkei as one of the “100 Most Influential People for Japan,” Saito began software programming in elementary school and started his own company while still in high school and was named Entrepreneur of the Year in 1998 (by Ernst & Young, NASDAQ and USA Today). As one of the world’s leading authorities on cybersecurity.

After selling his business to Microsoft, he moved to Tokyo in 2005 and founded InTecur, a venture capital firm. In 2011, he served as the Chief Technology Officer of the National Diet’s (Parliament) Fukushima Nuclear Accident Independent Investigation Commission. Later that year, he was named as both a Young Global Leader and Global Agenda Council member for World Economic Forum (WEF) and subsequently been named to its Foundation Board. In 2012, Saito was appointed to a council on national strategy and policy that reported directly to the Prime Minister of Japan.

Saito also advises several national governments around the globe. In Japan, he has served as an advisor to Japanese ministries; the Japan Society for the Promotion of Science; the National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST); the Information Technology Promotion Agency (IPAS); the 2020 Tokyo Olympic and Paralympic Games, among others. He is currently the Special Advisor to the Ministry of Economic Trade and Industry (METI) and the Cabinet Office for the Government of Japan.

He went to medical school at UCLA and Harvard Kennedy School; serves on various boards of Global 2000 companies; frequently appears as a commentator on TV and is the author of seven books in addition to writing several weekly newspaper columns. His management book, The Team: Solving the Biggest Problem in Japan, was published by Nikkei BP and became a best-seller in 2012. In 2016, Saito received the Medal of Honor from the Government of Japan for his work in the field of education.

Posted by whsaito

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