トランプより習近平のほうがマシ!? ダボス会議で感じた「期待」

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主役になった習近平

2017年1月17日から20日まで行われたダボス会議(World Economic Forum Annual Meeting 2017:世界経済フォーラム2017年年次総会)のメインテーマは「迅速な責任あるリーダーシップ(Responsive and Responsible Leadership)」でした。

しかし主要国の政治リーダーの中で、大統領就任式を間近に控えたトランプ氏がダボスに来なかったのは当然として、EUのキーマンであるドイツのメルケル首相も欠席。直前にEUからの完全離脱を表明したイギリスのメイ首相は来ていましたが、元気がありませんでした。

また日本は国会と重なり、韓国はスキャンダルでそれどころではない。そんな中、今回の主役になったのは基調講演を行った中国の習近平主席でした。

私は基調講演が始まる10分ほど前にメイン会場に着きましたが、すでに満席。そこでサブ会場に入ろうとしましたが、2会場あるサブの会場も満席で、結局、ロビーでiPadを通じて講演を見ることになりました。

10分前に来て基調講演の会場に入れず、さらにサブ会場にも入れなかったことは初めてです。

中国メディア、関係者が大挙して訪れたということもその理由のひとつですが、これほどダボス会議の出席者の注目を集めたのは、各国の中国に対する期待が高まっているからでしょう。私はそれを各国の参加者と話していて感じました。

トランプ政権誕生で、アメリカがどこに向かうかがまったく見えなくなりました。ヨーロッパもまた同じです。「Brexit(ブレグジット)」で揺れるイギリス、欧州統合を推進してきたドイツとフランスは今年、国政選挙を控え、どうなるかわかりません。

国際通貨基金(IMF)専務理事のクリスティーヌ・ラガルドさんと話をしたのですが、いまこそ、各国のリレーションシップが必要なときだけれど、これから各国のキーパーソンと関係性をつくり直さなくてはいけないと、かなりたいへんそう。

そんななかで習主席は、基調講演で中国が自由貿易を貫くことを宣言。トランプ新大統領が指向するとされる保護主義を批判しつつ、「私たちが世界のリーダーになる」というメッセージを世界中に送ったのです。

英語での通訳ではそれほど感じませんでしたが、中国語ではかなりストレートな表現を使っていたようです。

この習主席の講演に対して、「また中国のプロパガンダだ」と、いちばん冷ややかな眼で見ていたのは日本人だったかもしれません。いつもなら、世界経済フォーラムのシュワブ会長などから講演後、鋭い質問がありますが、それも今回はなし。かなり気を遣っているという印象を受けました。

一方、ダボス会議に出席した中国人がかなり誇らしげな様子だったのが印象的でした。またほかの国の参加者からも、中国の経済力に期待する言葉が聞かれました。

世界の国々、特に発展途上国は経済を引っ張るリーダーを求めています。アメリカやヨーロッパに期待できないとすれば、中国に期待が集まるのは当然かもしれません。だからこそ、習主席の堂々たる講演が歓迎されたのです。

先行き不透明な情勢で、みんな「ホープ」が欲しいのでしょう。中国への期待の高さから私はそんなことを感じました。

ダボスで聞いたトランプ大統領就任演説

今回、ダボス会議に出席しなかったトランプ大統領は「陰の主役」だったと言えるかもしれません。

1年前のこの会議では「可能性はゼロではないけれど、まあ、ないだろうね」という扱いだったのですが、実際に大統領の椅子に座ることになればダボス会議の出席者もその存在を無視できません。

会議最終日の夕方、テレビを通じて大統領就任演説を大勢で見ました。その場はまるでスポーツバーのような雰囲気で、ホームランが次々に飛びだす野球の試合を「観客」が手を叩き大騒ぎしながら見ている感じでした。

「思い切ったことを言うよね(笑)」「えっ、そんなこと言っちゃって大丈夫か?」というヤジのような感想が飛び交いました。

世界中がつながっていることを日常的に意識しているダボス会議の多くの参加者にとって、トランプ大統領の「世界」を意識しない「アメリカファースト」の考え方は、非常に内向きの「残念なもの」として受け取られたようです。

とは言え、彼が絶大な権限を握ったいま、その動向からは目が離せません。

就任会見を「観客」として眺めた彼らは今後、当事者として、さまざまな困難に対峙することになるかもしれません。

いま世界の政治潮流は、トランプ大統領のように、各国が自国の国益をむき出しにして、対抗する方向に流れていっているように見えます。

しかし一方で、難民問題、通貨問題、環境問題、サイバーセキュリティ問題、移動の問題、なにを取り上げても、ひとつの国だけで解決することはできません。それこそ大統領令ですべてが前に進むなどということはありえません。他国との協力関係、官民を超えた協力がなくては前進しないのです。

そうした意味で、いまほどダボス会議の底力が試される時代はないのかもしれません。

アメリカの新しい閣僚リストを見ると、ダボス会議でよく顔を合わせた人たちの名前が何人も並んでいます。頭脳明晰で確かな実績も見識もある彼らが、トランプ大統領のもとでどんな働きを見せるのか——私は注目しています。

変わり続ける組織

ダボス会議が初めて開催されたのは1971年のこと。40年以上続けば、組織はどうしても硬直するものです。どんなに優れた企業でも運動体でも硬直化からは逃れるのは難しい。

しかし、ダボス会議=世界経済フォーラムは常に変化し続けています。それは、創始者であり、トップに立つクラウス・シュワブが先頭になって破壊と創造を繰り返しているからです。

フォーラムの組織のあり方も物事の進め方も、常に変化しています。極論すれば、いつも変わってばかり。社会の変化に対応するために、自分たちが変わり続ける組織なのです。

今回の最近の大きな変化といえば、テーマごとの世界中の専門家の集まり、いわばシンクタンクとして機能していたグローバル・アジェンダ・カウンシル(Global Agenda Councils)がグローバル・フューチャー・カウンシル(Global Future Councils)という名称に変更、改編されたことです。

それに伴って、80以上あったテーマが35にギュッと絞られ、名前 (Future)の通り、より未来指向になりました。その中にはAIとロボット、バイオテクノロジー、ブロックチェーン、サイバーセキュリティ、都市、エネルギー、教育といった大きなテーマが並んでいます。

一方でひとつのカウンシルに所属する専門家は15〜20人程度から25〜30人に増えました。現在私が所属する「モビリティの未来」でいうと、環境の専門家もいれば、観光の専門家もいるというように、それぞれのカウンシル内で異なる分野の人と議論する体制になったのです。

またそれぞれのカウンシルでの議論の結果をダボス会議の会期中に、「スチュワード」と言われる各分野のパートナー企業のトップの前でプレゼンするようになったのも、今回のダボス会議からです。この「スチュワード」には、たとえば、カルロス・ゴーンのような自動車会社のCEO、航空会社のCEOなどがそれぞれ選ばれています。

これまでもダボス会議でさまざまな問題提起や発信をしてきましたが、今回からスチュワードに対してGFCがプレゼンすることになり、問題解決という部分において一歩進んだ形になったのではないかと思います。今後、スチュワードからプレゼンのフィードバックを受けて、さらにカウンシルの議論を進めることになります。

GFCの任期は3年ですから、カウンシルにおける議論—スチュワードへのプレゼン—スチュワードからのフィードバックというサイクルを3年間続けることになります。

まだ成果として公表する段階ではありませんが、こうした取り組みによってどのような未来の姿が見えてくるのか、今回のダボス会議が大いなる第一歩になったことは間違いありません。

現代ビジネスで掲載された

Posted by whsaito

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